電子デバイス、電子機器・装置の周辺で静電気を帯びた人体、物体が移動する事によって、それらとの間に直接的な静電気放電(ESD)が発生しなくても、誤動作を生じる事がありますが、この事象は殆ど知られていません。
冬の乾燥期に防寒服を着用して移動する場合、人体は10〜15kV程度、着衣はそれ以上に高い電位に帯電する事があります。このように帯電した状態で電子機器・装置の周辺を通過移動したり、あるいは電子機器を操作する事によって、直接対象機器に対して放電が起きていなくても、機器が誤動作する可能性がありますが、現状のESD耐性試験では全く考慮されておらず、問題の認識もされていないのが実情です。
特に人命にかかわるような装置や高信頼度の動作を要求される機器などは、誤動作の可能性を極力排除すべきです。
誘導ESDに起因する誤動作に比べ、電子デバイス、電子機器、電子装置等が直接的なESDによって、壊れたり、誤動作を起こすという認識は高まってきており、特に、電子デバイスでは、ESDに対する対策なしでは電子機器・装置の生産が事実上不可能です。
そして、その対策手法もほぼ確立されています。当社では、IC等の電子デバイスのESDに対する耐性を評価する試験機を30年以上にわたって提供しております。また、電子機器・装置の設計、生産、検査に関しても、製品、半製品等への直接的、間接的なESDに対する耐性の試験には既に確立した試験評価法があります。
これらは全て、デバイス、機器、装置と外具との間の直接の、あるいは周辺でのESDによる障害に対する耐性をテストします。テスト手法は国際規格、IEC61000-4-2を代表的な規格とする諸規格で決められています。
しかしながら、誘導ESDに対する耐性テスト手法は残念ながらまだありません。そこで当社が開発した、i-ESD-10Aを使って放電が発生している事が検出出来たら、事前に対策をしておくべきです。
新製品で工場出荷する時には、誘導ESDが発生していない場合でも、現場への据え付け、設置、定期点検、修理後のカバー、ケース、扉等の締め付け不良、建てつけ不良等で近接間隙が残される可能性が予想できる場合には、事後に誘導ESDが発生しない事を確認して作業を終了する等の注意が必要であると考えます。
当社では、平成23年2月に経済産業省の中小企業新事業活動促進法に基づく「異分野連携新事業分野開拓計画」に関する認定を受けて、上記のような環境での電子機器・装置、電子デバイスの堅牢/安全性を確認し、もし安全性が十分でない場合には対策を講じる事が出来る製品、手法を提供する事業を開始致しました。
静電気、静電気放電に関するトラブルに関しては、これまでもその原因究明や問題解決に関する種々の努力が継続的になされ、その成果には目を見張るものがありますが、とはいえ、まだまだ原因不明のトラブルも多く存在しています。中には静電気、静電気放電とは無関係なトラブルが、静電気、静電気放電のせいにされているものもあるかもしれませんが、誘導ESDのように、静電気放電に起因しているにもかかわらず、単なる一過性のトラブルとされて放置されている場合も多くあると考えます。この種の問題は、原因究明できる可能性のあるものを地道に一つずつ解決して、範囲を狭めてゆく以外に根本的な解決手法は無いと考えます。私達の取組みが、少しでも問題範囲の縮小に役立てる事を期待しております。
モデルi-ESD-10A、誘導ESD耐性検査装置は本事業で開発した最初の製品です。今後種々の形状の電子装置、機器に対応すべく製品系列、バックアップ体制を充実してまいります。なお、これら製品に関しましては全て特許出願済みです。
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